「窓」のデザイン -西日が暑いはウソ?!-
こんにちは。デザインHIRAYAのシンクホームです。
最近の家づくりでは、窓の数を減らす方が多い印象ですが、皆さんはどうお考えでしょうか?
以前は、「リビングに吹き抜けを作って、天井まで届くような大きな窓が欲しい!」なんて考えの方が多いイメージでしたが…CMなどのせいですかね…
窓を減らす理由として、『コストを減らすため』と『掃除しやすくするため』ということが大きな理由と言えるでしょう。
また、ミニマルな暮らしが流行っているというのも要因であると言えます。
断熱性能という観点から見ても…
熱の流入・流出の大半は窓からになるため、窓が無い方が断熱性は高まります。
かと言って、全く窓を無くすことは建築基準法によって難しいです。
(※採光の基準、換気の基準など様々な条件などあります)
外観、室内の雰囲気を決める上でとても大事になるのが窓です。
今日は、窓を決める上で、考え方の参考になるお話をしたいと思います。
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窓の種類
代表的な窓の種類を紹介します。
引き違い窓
サッシを左右に移動して開閉をする窓。
一般的に多くの住宅で使われており、庭やウッドデッキとの出入りに使用するための掃き出し窓も引き違い窓にすることが多い。
(※掃き出し窓:窓の下部分が床に接しいる窓で「ほうきでゴミを掃き出す」という説も)
すべり出し窓
縦または横に、外側に斜めに飛び出して開く窓。
ガラス1枚のため省スペースで、キッチンやトイレなどで使いやすい。
FIX窓(はめごろし窓)
開け閉めのできない窓。主に採光や眺望のために使用する。
高窓や天窓などに使用することが多い。
何のための「窓」ですか?
「窓」を設ける理由…
採光と採風、そして眺望のためでしょう。
間取りを考えつつ、この部屋ではこんなことしたい、どんな過ごし方をしたいのかなどをイメージすることで、窓についても考えやすくなるのではないでしょうか?
例えば…
ワークスペースとして使いたいのであれば、しっかりと採光がとれて明るく。
景色が良さそうだけど掃除はしやすくしたいと思うのであれば、思い切ってFIX窓にしてしまう。(余計なパーツが無い分メンテナンスはしやすくなるため)
と言った具合です。
「窓」を考える前に太陽を知る
太陽について、改めて知りましょう。
「窓」を考えるヒントになるでしょう。
「窓」は天然のストーブ
日の光は熱エネルギーの塊ということを理解しましょう。
窓から入る太陽の日射熱をW換算すると良く分かります。
南面からの日射熱は…
冬季平均値で300w/㎡、夏季平均値で800w/㎡ となります。
(気象条件など様々な要因によって変化します…)
夏季において、3.6㎡(幅1800㎜高さ2000㎜)の南向きの掃き出し窓があった場合。
3.6㎡ × 800W = 2880W
つまり、1000Wの電気ストーブが約3台稼働しているということになります。
(※気候条件や窓の日射熱取得率などは考慮しておりません)
冬にはたっぷりと日の光を取り入れて、夏にはしっかりと遮る必要があるということがよく分かったことでしょう。
太陽の動き
実際の動きと全くと同じとまでは言えませんが、イメージとしてはこのような動きで太陽は動いております。
夏にはとても高い位置にあり、日射時間が長いということと…
冬には低い位置にあるということが、よくお分かりいただけるでしょう。
太陽の動きを改めて確認した上で考えてみてください。
東西南北の4方向で最も日が当たり、暑くなるのはどこでしょうか?
「西日が暑い」はウソ!?
新築をするにあたり、西側に大きな窓を設けようとする人はほぼいないと言ってもいいでしょう。
なぜなら、「夏の西日は暑い」とほとんどの方が考えるからです。
ですが、本当に西日は暑いですか?
南の方が暑くないですか?
結論を先に出してしまうと、最も日が当たるのは「東側」と言われております。
次いで「南」「西」「北」となります。
では、なぜ「西日は暑い」という認識をみんなが持っているのか?
それは時間帯のせいであり、感覚的な問題と言えます。
「西日が暑い」理由① 気温が最も高いから
午後から日が傾き始め、日の入りに向かって西日が当たります。
その時間は一日の中で最も気温が高くなっている時間帯です。
建物自体にも熱がたまり、何もしていなければ室温も最大を迎えることでしょう。
「西日が暑い」理由② 体温が最も高くなる時間だから
気温とともに、体温も最も高くなる時間帯と言われております。
また、一日を過ごして疲れも溜まってきているのが夕方です。
「西日が暑い」理由③ 視覚効果も助長
「夕焼け」と呼ばれるように、大気の層の関係などにより、夕日は赤などの暖色系の色で視認されます。
ちなみに、「朝焼け」とも言い朝日も赤いのですが、そもそも朝日を見る人は少ないでしょう。(夏は日の出は早いので尚更です)
いかがでしょうか?
様々な要因により、「西日は暑い」と思い込んでしまっているのです。
実際、気温自体は高い時間帯なので、それに伴って「西日が暑い」ことは事実ではあるのですが…
「西日自体が暑いわけではない」ということは分かったかと思います。
つまり、西に大きく窓を設けることは決して悪いことではないということです。
景観が良いのであれば、思い切ってしまうこともアイデアの一つと言えるでしょう。
ただし、「暑い時間に西日が当たること」は間違いないので、その点をどう考えるかです。
上手な採光!「天窓」と「スリット窓」
十分な採光を取って、明るい部屋にしたい…
でも、あまり大きな窓は設けたくないし、見た目は気にしたい…
そんな悩みを解決するのが、「天窓」と「スリット窓」ではないでしょうか?
「天窓」の能力は3倍!
「天窓」とは天井に設ける窓です。
全ての部屋で南側に窓を設けることができれば良いのですが、そうはいきません。
場合によっては、北側にしか窓を設けることのできない部屋もあるでしょう。
そんな時に考えて欲しいのが「天窓」です。
壁面の窓に比べて、「天窓」の場合およそ3倍の採光効果があると言われています。
そのため、北側に向いた天井面だとしても、十分な採光を得ることができます。
またそれだけの採光能力があるため、同じ採光量を得るのに、壁面に窓を設けるよりも小さな窓で済みます。
気を付けたいのは、南側に天窓をつける場合です。
夏場には、日が入り込みすぎて暑くなると考えられますので、取り付けたいのであれば、よく考えてからにしましょう。
スタイリッシュな「スリット窓」
採光はしたいけど…
防犯のことや見た目のこと、景観自体は意識しない場合であれば…
「スリット窓」という選択が有用ではないでしょうか?
人の出入りは不可能のため防犯としても役に立ち、見た目もスッキリしているためにデザイン性を求める方には最適と言えます。
好みによりますが、縦に長いスリット窓を複数並べるのもかっこいい窓のデザインと言えるでしょう。
採風をするのであれば「すべり出し窓」を採用できます。
また、採光だけが目的であれば「FIX窓」にしてしまうのも方法の一つです。
外から室内が見えないようにしたい、と思うのであれば「高窓」に横に長い「スリット窓」を採用するのはいかがでしょうか?
「高窓」であれば周りの環境にもよりますが、より採光はしやすいとも言えます。
「暮らし方」「過ごし方」を優先する!
西日自体が暑いわけではないことや、天窓やスリット窓の魅力についてもお話させていただきました。
例えば…
「リビングには南側に大きな窓を!」
「子ども部屋は南東に!」
「トイレは北側にしよう!」
などという固定観念は一度忘れてしまいましょう。
あたらしい家でどんな暮らしをしたいのか…
それぞれの部屋でどんな過ごし方をしたいのか…
間取りを考える時に方角や位置を決めつけず、その場所に合った「窓をデザインする」という方法はいくらでもできます。
固定観念を無くすことで、より制限を無くして間取りを考えることができるようになるでしょう。
もちろん、大切なことは「優先順位」です。
「南側に大きく庭を設けて、その庭と繋がるような掃き出し窓が欲しい」という優先すべき「暮らし方」があるのであれば、まずは優先して考えるべきです。
方角別の特徴
東西南北、それぞれの窓の特徴をお話します。
東
朝日が一番に差し込むのが東面の窓。
日の出ともにナチュラルな暮らしを目指すのであれば、東面に窓を設けて朝の光をたっぷりと取り入れるのも良いでしょう。
ただし、年間通して最も日が当たるのは南面ではなく東面と言われております。
夏場には早朝から日が入り込み過ぎて、暑くなることも考えられます。
室内干しをするためのランドリールームを、東側に設けて、朝からしっかりと日を取り込むというのも、暮らし方の一つのポイントとなるでしょう。
西
敬遠されがちな西面の窓ですが、考え方次第では暮らしにアクセントを加えてくれます。
あまり大きな窓は設けず、スリット窓など、夕日がやさしく入り込むようなデザインにしたり…
景色が良いのであれば、いっそ景観を、夕焼けを楽しめることができるような大きさの窓を設けてしまうのも一つの方法です。
確かに西日はまぶしくもあり嫌だと感じる方がほとんどだと思いますが…西日自体が暑いわけではないということは覚えておいてください。
南
南面の窓は、やはり大きく取りたいと考える方が多いでしょう。
南側に庭を設けて、そこと繋がる大きな掃き出し窓…
一日を通して日が入り、明るいリビングを演出できる南面の窓は、誰しも憧れることでしょう。
最近は外観のデザインに、四角を組み合わせた見た目や、屋根が短い、軒の無いデザインが増えた心象です。
その場合、夏にはたっぷりと日が入り込み暑くなりますので、覚悟が必要とも言えます。
大開口の南面窓で、後悔する一番のポイントです。
軒を作ったり、タープを庭に設けるなどして、しっかりと日を遮る工夫が必要です。
北
そもそも北側の窓でも採光は可能です。
ただ、南面のように直射は入りませんので、間接光となります。
冬場に日光を取り入れて、あたたかい部屋に…というのは難しいかもしれません。
ただし、その分明るすぎない柔らかな明かりを得ることができます。
より十分な採光をしたいのであれば、すでにお話した天窓を採用することで叶います。
おわりに…
あなたの家づくりでは、「窓」についてどうお考えですか?
窓を減らせばコストも減ります。
また、どんなに性能の良い窓だとしても、「ある」のと「ない」のとでは、「ない」方が断熱性能は良いに決まっています。
窓からの熱の流入・流出がほとんどなのですから…
ただ全く無くすワケにもいきません。
だからと言ってなんとなく窓を決めてしまっては、もったいないです。
その部屋でどんな過ごし方をしたいのか…
もう一度しっかりと見直し手考えてみてください。
採光だけが目的ならFIX窓でも良いですし、プライバシー重視のために高窓にしたり…
よく想像しながら理想の暮らしを描いてみましょう。
色々とお話をしてしまいましたが、考え方の一つとして参考にしてください。
「窓」を決めるには、その他性能についても考えなくてはいけません。
樹脂とアルミの複合サッシか樹脂サッシか…ペアガラスかトリプルガラスか…などなど…
あまり難しくは考えずに、楽しい暮らしをイメージして、その中に「窓」についてのことも足して考えてみてください。
その上で、住宅会社とよく相談をして決めていくのが、間違いのない家づくりとなるでしょう。